カノンはじめの「隠れたところもあまねく照らす」

祈祷師の下で事務員をしていた時に見た世の中の裏側や、バンパイアと暮らしていた時のこと、その他スピリチュアルなことやヒーリングなどについて主観的に綴ったブログです。

一輪の華

それでもこの寺に来てよかったことは、たくさんあった。

一番よかったのは、
自分を肯定できるようになったことだ。

不倫でも、怨みでも、略奪でも、裏切りでも、
その他どんな悪(と他人様から言われるようなこと)でも
自分が本当に望むなら、それを叶えればいいと、和尚は言った。
それが「善」だと。

我欲を肯定した宗教は、小坊主にとって初めてだった。
特に、親を憎み、敵対することなど、認める場所などなかった。

家で、自分は常に「悪」だった。
それは生まれた時から変わらなかった。
小坊主は、和尚の元で、初めて自分が肯定されたと思った。

自分を善とし、貫くこと。
思想上でも、信者に見せない裏側でも、その姿勢は変わらなかった。
結局、和尚の自分勝手に負けて、小坊主は逃げ出すことになったけど、
だからこそ、その態度を手本として、救われる部分もあった。

「なにをおいても、第一に、自分が救われなさい。
その為に犠牲になる人が出ても、悪いと思うことはありません。
その人も時期がくればやがて悟り、救われようと思えるようになります。」

それを体現するのが、秘書だった。
我欲のために、他は省みず、すべてをなぎ倒していく。
ただ彼女は純粋に欲を追及しただけかもしれない。悪気はなく、ただ無邪気に。

仕事の運営上どんなに不都合があろうとも、和尚は秘書を信じ、愛した。
呆れるほどまわりに不都合を撒き散らし、小坊主も被ったけれど、
それも一つの愛の形と、言えなくはない。

そこだけが、少しばかり光って見えた、ような気がする。

おびただしい泥の上の、一輪の華か。