カノンはじめの「隠れたところもあまねく照らす」

祈祷師の下で事務員をしていた時に見た世の中の裏側や、バンパイアと暮らしていた時のこと、その他スピリチュアルなことやヒーリングなどについて主観的に綴ったブログです。

野坂昭如という人

だいぶ昔の話だが、大島渚と舞台上で殴り合っているシーンをTVで見て

すごくバイオレンスな人だと思っていた。

 

このお二方は絶交していると思えばそうでもないようだったりして

よくわからなかったが

 

どうも野坂昭如はいろいろな人を殴るらしい、というのはあちこちで聞いていた。

 

そして中学生の頃、国語の教材で「ほたるの墓」が取り上げられた時

その描写や感覚にショックを受け、他の著書も決して読むまい、と決めてしまった。

 

とにかくグロテスクでバイオレンスな人、という認識だったが

 
 

先日Apple Musicクレイジーケンバンドの10年近く前だかの年越しライブアルバムを発見し

 

鳥肌実が出ていた映画「タナカヒロシのすべて」で

エンディングに使われていた「シャリマール」も入っていたので

喜んで聴いていたところ、

 

ゲストとして野坂さんが登場されたのだ。

 

なんと、そこでも剣さんが野坂さんに殴ってもらったらしい。

 

もらった、というのは剣さんの希望だったわけで

本編中はその描写はなかったけれど

 

解説中で剣さんが語っていた。

 

ライブの中盤は野坂さんが何曲か歌ったり説法されたりしたんだけど

剣さんも言われていた通り

 

とても繊細な人だと感じた。

 
 

ライブ会場はおそらくほとんど剣さんのファンで、若い人ばかりで

野坂さんのことは知らない人が多かったのではと思うけれど

 

その彼らを前にして

 

「年寄りのずるさは私もよくわかっているから

そんな人間の犠牲になることはない。

自分の好きなことをして生き抜きなさい」

的なことを言われていた。

 

年をとった人の中にもそういうことを言う人がいるのだと感心しつつ

この人は瑞々しい心のままに年をとったのだな、と思った。

 
 

歌われた中の一曲に

「バージン・ブルース」

があった。

 

作曲は知らないが、作詞は少なくとも野坂さんで、野坂さんの持ち歌なのだ。

 
 

本人が歌うのを初めて聴いた。

 

この曲を知ったのは、戸川純のアルバムだ。

 

アルバム名は忘れたが、懐メロのカバーアルバムだったと思う。

 
 

ジャケットの戸川純

ゲルニカ」の時みたいなレトロな姿だった。

 

最初その曲を聴いたときは

野坂昭如ってなんてヘンな曲を作るんだろうと思ったけど

 

戸川純にはなんとなく合っている気がした。

 
 

でも初めて本人が歌うのを聴いて

切迫した何かを感じた。

 

ギリギリ感というか

 

いい悪いの判断をすべて捨てて感覚だけになり

ヒリヒリして情動に突き動かされるような感覚。

 

歌詞をここで挙げることはできないけれど

彼自身の中に血を流すような何かを見たというか

それをエネルギーの赴くままに表現しているというか、そんな感じ。

 

若い時の歌を聞いたら、また違うように感じたかもしれないけど。

私も年をとっているし。

 
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彼はやはり表現者だと感じた。

 

去年亡くなってしまって

あのように強く鮮烈に生きたように見えた人も

どこか儚いように感じる。

 

著書もなにか読んでみようと思う。