昨年の話になってしまうが、
私には約10年来の懸案があった。
母の付き合っていた人(仮にAさんとしよう)の息子さんが約10年前、自殺したのだ。
その一年前、母はAさんと付き合い始めたことのお披露目を、両家の家族だけ呼んで内輪で行ったのだ。
その時、すでに息子さん(Bさんとしよう)は、少し閉じたループに入ってしまっているように見えた。
あの時そのことを、Aさん始めAさんの家族や母に言っていれば、もっと違っていたかもしれないと思ってしまい、それはずっと心に巣食っていた。
しかし去年の夏、ふと
「いや、それはやはりBさん自身の問題だ。その結果は彼が選び取り引き受けたのだ。だからもう気にする必要はない。」
と思えた。
それでなんとなく心が軽くなった。
直後母宅へ遊びに行くと、
なんとAさんが亡くなったということだった。
まだAさんの死から、49日経っていなかった。
だから、もしかしたらAさんが私のもとに訪れ、そう告げてくれたのかもしれないと思った。
もう息子と一緒だから、気にしなくていいよ、と。
Aさん.ありがとう。
でも母がAさんに出会ってから、意外に早くAさんはいなくなってしまった。
父のような横暴な人でない、優しかったAさんとの日々、
そして失った悲しみはどのようなものだろう。
私はそれを知ることができない。
それは孤独ではあるが、
そこには救いもあるはずだ。
もう、心配しなくてもよいのだ。
(西荻窪「こけし屋」のポークカレー)