ちょっぴり気持ち良くなりたかったら、下町に出かけるといい・・かもしんない。
女にはだれでも、ほめられたい時がある!
山手線の西側には、美人が掃いて捨てるほど?いる。
なので並以下の私は、若いときでさえ褒められたことなどなかったし、
歯牙にもかけられなかった。
しかし、ここ下町に来ると
年増の私をおじさんたちはよくほめてくれるのである。
「あんた、きれいだね」
とか、
「今日来た中で一番美人だ」
とか、うまくすると
「あのご婦人の会計を一緒に」
などと、払ってくれたりすることもあるのである。
いや、これは滅多にないけど、
食後のコーヒーをサービスしてくれることもある。
自転車でとおりすがる風来坊的なおじさんも
「かわいいね~」
等と一言かましてくれる。
まあ、お店のおじさんのリップサービスなのだが、
青山や渋谷じゃそんなことすらしてくれない。
自転車のおじさんだって、ヘンな人かもしれないけれど
それでもいいと思えるくらい、私は褒めことばに飢えている。
この際、それがお世辞だろうとどうでもいい。
容貌を褒められたことはないから、涙が出るほど有り難いのだ。
褒められ慣れていないから、真に受けて恐縮してしまう。
ひねくれてしまっている、ブスの悲しい性だ。
褒められ慣れている下町女のように、粋にサラリとかわせないのだ。
そう、下町のおじさんは、褒めるノウハウをもっている。
女性の少なかった江戸時代から培われた土壌があるのだろう。
てぬぐいを選んでいると、手近な干支のついたものを出してきて
「これはあぁただよ、なんて読むかわかる? 大きい羊。」
「これは竹カゴに入った犬、今、あぁたこれだったでしょ」
などなど、バナナの叩き売りのように、決まった文句が出てくる。
べつにお客さんが美人でなくても、気持ちよく買い物をしてもらうためのことばを
たくさん持っている。
そうしておじさんたちも一緒に、ちょいとした駆け引きを楽しむのだ。
江戸のおじさんたちは、ラテンである。
冗談の一つも言えないと、男じゃないのである。
自分は、ちょっとだけ真に受けに、下町に遊びに行く。
粋な下町女にはなれないが、ささやかな自尊心を養いに行く。
写真は日本橋・浜町の高虎さんのステッカーでございます。