今回の記事は「本」という書庫に入れているが
前回の「本」に入れた記事を見ると
何やら悟っておる・・(笑)
しかし今、あの時の気づきはどこへやら
また迷っておる(爆)
まあ、そうしたことの繰り返しで徐々に意識は変わっていくのかもしれないが
なかなか、時間がかかる
仕方あるまい・・
さて、山口瞳の「血族」を読んだ。
今年の1月に購入して、ただ積んでおいた。
先月友人たちと横須賀の二つの赤線跡を訪ねたこと、その時寄ったカフェに置かれていた自費出版本をその日に先駆けて読んだことが呼び水になった。
短編集なので部分的に読んでいたが、そのカフェがモチーフになっている小説もあり、再来するに当たって通しで読んでおきたかったので手に取った。
(ここがそのTHE FACE CAFE)
舞台が三浦~横須賀~鎌倉周辺という共通項もあり、さらにこの界隈について詳しく書かれていると思しき「血族」をそうした経緯でやっと手にした次第。
前置きが長くなったが、
この本を知ったのは4年くらい前だったろうか。
そのサイトに飛んでみると、当時は某密林に在庫があった。
が、翌年だか翌々年探してみると、もう在庫はなく、絶版状態で中古もヒットしなかった。
山口瞳氏の本を読むのはこれが初めてである。
でも国立あたりの店を検索すると、氏がこの街に住んでいたことから
所縁の店が出てきたりする。
特に私が国立に行くたび寄っている「ロージナ茶房」は行きつけだったようだ。
(写真2枚は国立・ロージナ茶房にてミートソースとコーヒー。どうも3年くらい前と比べるとミートソースの味が変わったような気がするのだが、気のせい?)
超ざっくり要約すると、氏の家系、特にお母様は洗練された方だったが、死ぬまで出自を明らかにされなかった。それは横須賀の柏木田遊郭の出身だったから、ということだ。
確かに佐野町のバス通りにはそれらしい建築(カフェー建築)があり、なぜ赤線街と公式に言われていた安浦町や皆ケ作、また横須賀の中心部から離れた場所にそういったものが見つかるのだろう?と不思議には感じていた。
でもこの本を読んで、それが納得できた感じになった。
この街全体にあるどこか艶っぽい雰囲気、また、行くと必ず頭痛に悩まされることにも納得が行ったというか。
その佐野町の建築も柏木田から離れているし、同じく佐野町の「のぼり雲」という温泉施設も離れているが、その町の素性に通じる何かがあるように思う。
地図で見ると、確かに不自然に広い通りが三浦街道に平行する形で残っている。
ただ海側から来るにはかなりの急坂を登らねばならず、それがこの遊郭の衰退を招いた一因でもあったようだ。
圧巻なのは氏が出自の貸座敷の様子を知るために集めた資料の引用部分である。
当時の記者によって綴られた文がほとんどだが、生き生きとしている反面毒々しく、生々しく当時の様子を伝える。
知りえたことを表現することについてはためらいを感じないものの、
それらを知ることについて、氏は全編を通して逡巡を繰り返している。
これは知ってよいものか、知らざるべきか。
そう迷うのは、知りたいからでもあると思う。
そして恥部ともいえる部分を敢えて書くところに、物書きの業のようなものを感じる。
(「山口瞳「血族」から・その2」に続きます。)